西日本新聞の「カリスマ書店員の激オシ本」で『ローカルクリエーター』が取り上げられました

福岡の書店ブックスキューブリックの大井様が、西日本新聞で連載中の「カリスマ書店員の激オシ本」(2022.6.11)にて『ローカルクリエーター』を取り上げてくださいました。

『ローカルクリエーター』出版記念トーク

2022年2月24日、リエゾンセンター・ライブラリーのブックイベントに、『ローカルクリエーター』にもご登場いただいた藏光農園の藏光さんご夫婦とともに登壇いたしました。ユーチューブのアーカイブを掲載いたしますので、どうぞご覧ください。

 

書籍『ローカルクリエーター』出版記念トーク
「これからの地方をつくるローカルクリエーターとは」

企画主旨

まず本書は、単に地方暮らしを推奨するだけの本ではありません。あるいは「半農半x」のように、小さな暮らしを楽しみながら持続可能な生き方をしましょうと提言する本でもありません。

 

本書は、地方を拠点に好きな仕事で付加価値を生み出し、得た利益を地元に引き込む――そんなウィズコロナ、アフターコロナ時代の新たな地方論を考えるための本です。

 

「ぼくたち/わたしたち」が地方を元気にするときがきた

日本の戦後復興を支えたのは地方の人たちでした。多くの地方人材が太平洋ベルト地帯に移り住み、国が推し進める工業化の担い手として懸命に働いたからです。その結果、日本は世界に誇るものづくり大国となり、一億総中流社会が実現しました。

 

ところが戦後70年が過ぎた今、東京一極集中が加速する一方、多くの地方は元気を失い、人口減少や高齢化率の上昇に歯止めがかかりません。かつて地方の人たちが工業地帯に出てがんばって働き、日本は豊かになったのに、巡りめぐって自分たちの地元を衰退に追いやったのだとしたら、こんなに悲しいことはありません。

 

そこで、「ぼくたち/わたしたち」の出番です。地方衰退が叫ばれている今、都会で大きく成長した「ぼくたち/わたしたち」が地方に還り、築いた経験やノウハウを活かして地元を元気にしよう――そんな呼びかけの気持ちをもって本書を企画しました。

 

「ぼくたち/わたしたち」とは?

本書では、UJIターン(都市部の居住者が地方に移住する総称)をした人、あるいはしようとしている人たちを想定しています。

 

ひと昔前のUJIターンは、都会暮らしに疲れた人が田舎に移住するイメージでした。本書のとらえ方はそうではなく、積極的な地方への凱旋のイメージです。

 

いちばんのポイントは、地方移住後も地域内での事業に閉じていないこと。つまり域外の都市部とも積極的につながりながら仕事をしていること。

 

具体的には、つぎの2つです。

 

・都会で経験やノウハウを積み上げた人が、人生のステージアップを目的に地方に移住し、築いた知的財産や人的財産を活かして地方で付加価値を生み出せる人。

・その生み出した付加価値を地産地消にとどまることなく、域外のマーケットにも提供し、得た利益を地元に引き込むことができる人。

 

地方で付加価値を生み、地元に利益を還元する「ローカルシティワーク」

本書が提唱したいのは「ローカルシティワーク」という働き方、暮らし方です。ポイントはつぎの3つです。

 

  • 地方×〇〇   地方を拠点に好きな仕事を掛け合わせ、付加価値を生み出す
  • 地方×都市部  都市部との垣根を超えたクリエイティブワーク※で付加価値を最大化する
  • 地方×地産外消 生み出した付加価値を域外に提供し、得た利益を地元に引き込む

※クリエイティブワーク:IT業や企画業、広告業、出版業をはじめとした情報通信業、クリエイティブ業種を想定

 

まず、地方を拠点に好きな仕事「x(エックス)」を掛け合わせ、付加価値を生み出せる論拠を示していきます。

 

つぎに、都市部を掛け合わせる意味は付加価値の最大化です。奇しくもコロナで地方に居ても都市部と連携しながら仕事ができると分かりました。地方を拠点に都市部との垣根を超えたクリエイティブワークで、より魅力的なモノづくりやコトづくりが可能と提案します。

 

そして最後に、地産外消です。地方で生み出した付加価値を地産地消にとどまらず、域外のマーケットにも積極的に提供することで、得た利益を地元に引き込む地域貢献が様々な分野で、かつ個人レベルでも可能と提案します。

 

つまり、「地方を拠点にクリエイティブワークで付加価値を生み、得た利益を地元に還元する」ということです。この概念を本書では「ローカルシティワーク」と定義します。そしてこの「ローカルシティワーク」を実践するプロフェッショナルのこと、本書では「ローカルクリエーター」と位置付けます。

 

地方で付加価値を生む「ローカルクリエーター」こそ、地方創生の主役

地方を拠点にクリエイティブワークで付加価値を生み、地元に利益を引き込める「ローカルクリエーター」が増えれば、消費と納税というダブルインカムで地域の経済を活性化させられます。

 

クリエイティブワークで稼げる個人が日本中の地方に生まれれば、日本の中で内需を盛り上げ、地方全体を活性化できるのではないか。コロナでインバウンド需要がいったん消失したものの、日本経済は底堅い内需が支えている事実も改めて示されました。コロナを乗り切ったとしても、また新たなパンデミックがいつやってくるか分かりません。インバウンドに期待するだけではなく、国内需要の強化で日本の足腰を強くする。そんな意識をもつことが大切な気がします。

 

実践者ケーススタディ

以上のような「ローカルシティワーク」の実践例を示すために、本書では地方で活躍している様々な分野のプロフェッショナルを紹介。地方を拠点に付加価値を生み、地元に利益を還元する働き方、暮らし方に迫り、ウィズコロナ、アフターコロナの地方論を考えていきます。

目次

はじめに

 

プロローグ 出でよ、ローカルクリエーター

25年前に憧れたライフスタイル

田舎の自宅で好きな仕事を――20年越しの夢をかなえる

ブックライターとして充実のデュアルワーク

地方発の情報発信の受け皿になりたい

東京と地方の「情報格差」が縮まった

出版業こそ、地方に向いたビジネスである

クリエイティブワークで〝外貨〟を稼ぐ

出でよ、ローカルクリエーター

 

第1章 今こそ地方をクリエイティブ拠点に

かつての日本は地方が主役だった

  ▶地方暮らしを支えていた生業=クリエイティブワーク

  ▶職住近接の人間らしい暮らし

ところが150年後の今……

  ▶戦後の工業化で人口大移動

  ▶サラリーマン化した結果の東京一極集中

  ▶産業の一極集中こそが課題?

  ▶踊らされてきた地方の人たち

「集中」で得たもの、失ったもの

(集中で得たもの)

  • 経済効率の良さ②エネルギー効率の良さ③文化・エンターテインメントの醸成

(集中で失ったもの)

①職住分離による通勤苦②地域間格差③多様性の欠如

「分散」への機運が高まり始めた2010年代

  ▶「高橋君、田舎でライターは無理やで」

  ▶都市部の仕事を地方に持ち込みたい

  ▶10年で様変わりした「環境」

  ▶「分散」の意味

  ▶「積極的な地方移住」が始まる

幕を開けた地方新時代

  ▶古い信念や価値観を手放し、本来の自分に戻る契機に

そこで、「ぼくたち/わたしたち」の出番だ

  ▶地方こそ、クリエイティブライフに向いている

  ▶コロナは100年に一度のゲームチェンジャー

  ▶地方が都市部のリソースを活用する時代へ

 

第2章 地方を元気にする「ローカルシティワーク」という働き方、暮らし方

ローカルクリエーターの位置づけ

  ▶利尻島と加東市がつながったとき

  ▶兵庫県加西市を拠点に、マニアック音楽を世界に発信

  ▶「付加価値」とは何か?

ローカルシティワークの3大ポイント

【ポイント①】「地方×x(エックス)」=地方を拠点に好きな仕事を掛け合わせ、付加価値を生み出す

  ▶古き良き日本の働き方、暮らし方への回帰

  ▶掛け合わせる重要性

【ポイント②】「地方×都市部」=都市部との垣根を越えたクリエイティブワークで付加価値を最大化する

  ▶「都市部リソース」とは?

  ▶市場が見えなくなるリスク

【ポイント③】「地方×地産外消」=生み出した付加価値を域外に提供し、得た利益を地元に引き込む

  ▶地産地消も大切にしながら

  ▶地方で財を生産し、関東圏に販売して地域が発展してきた

  ▶ターニングポイントになった1995年

  ▶ウィズコロナ、アフターコロナ時代の地域経済産業政策

Uターンは最強の人材育成システム

  ▶地方への積極的な凱旋

  ▶地元に貢献したいUIターン希望者の増加

  ▶都市部の役割は人材活用から人材育成へ

クリエイティブワークを地方でおこなう利点

  ▶東京の主要産業こそ地方に向いている

  ▶〝外貨〟を稼ぎやすい

  ▶地域経済に与える影響が大きい

ローカルシティワークのメリットは無限大!

  ▶職住近接――人間本来の働き方、暮らし方が可能に

  ▶自然(癒し)と都会(刺激)のバイオリズム

  ▶自分ブランドが強化されていく

  ▶自分の仕事で地元を元気にできる

  ▶本当の意味での地方創生・地域活性化の主役になれる

 

第3章 地方で活躍する「プロフェッショナルズ」ファイル

【ケース① 地方×コミュニティデザイン】   ――兵庫県加東市(北播磨)

共生研究家・共生コーチ 牛飼勇太さん

スキルとブランド力、そしてデジタルツールを武器に、

築100年の古民家から全国とつながり多彩に情報発信

 

【ケース② 地方×起業】           ――新潟県新潟市

フラー株式会社 代表取締役会長 渋谷修太さん

「新潟×起業×高専」の合わせ技で地方を盛り上げる!

コロナを機に新潟にUターンした起業家・渋谷修太の新たな挑戦

 

【ケース③ 地方×企画】           ―――兵庫県洲本市(淡路島)

株式会社シマトワークス 代表取締役 富田祐介さん

淡路島の魅力を結びつけて価値を生み出し、島外に発信。

関係人口を創出し、人と利益を島に呼び込むプロデューサー

 

【ケース④ 地方×出版】           ―――神奈川県足柄下郡真鶴町

真鶴出版 川口瞬さん・來住友美さん

真鶴の暮らしぶりを発信し、共感する人たちを迎え入れる。

ローカルメディアの価値と可能性、豊かな生き方のヒントに

 

【ケース⑤ 地方×農業】           ―――和歌山県日高郡日高川町

藏光農園 藏光俊輔さん・藏光綾子さん

ITを先駆的に活用し、農産物の付加価値を高めて都市部に提供。

田舎を拠点とした農業で都会とつながり直す、新しい暮らし方

 

【ケース⑥ 地方×IT】           ――兵庫県三木市(北播磨)

N’s Creates 株式会社 代表取締役 中田和行さん

テレワークの一歩先行く「リモート×オフィス」の二刀流で事業拡大。

地方を拠点にスマホのアプリ開発、利益を地元に還元するIT企業

 

エピローグ ローカルクリエーターこそ、地方活性化の主体者たれ

地方が主体になる大切さ

  ▼地元にUターンした際の「違和感」

  ①大手のビジネスに乗じている気がしたこと

  ②外部の目に触れきっていないこと

  ③地元の人が主体とならず、知恵を絞っていないこと

  ▼東京に丸投げの情けなさ

だからこそ、ローカルクリエーターの出番だ

 

おわりに

 

装丁 山田和寛(nipponia)

本文デザイン・図版 松好那名(matt’s work)

校正 株式会社ぷれす

 

お取り扱い書店(2022.3.9現在)

『ローカルクリエーター』をお買い求めいただける書店様のリストです。※2022.3.9現在